関空税関で高校生のお土産を押収、下着まで確認する醜悪。日韓米、抗議拡大まとめ

日本の税関が朝鮮の子どもに嫌がらせ、下着袋まで開け一着づつ確認

6月28日、修学旅行から帰ってきた朝鮮学校生徒らからお土産を没収し、泣き叫ぶ子供から「同意書」まで強制する、関西国際空港税関の非人道的な「嫌がらせ」を受けた。女子生徒の中には下着袋まで開け一着ずつ荷物を確認する執着さだったとSNSで投稿する親もおり怒りに溢れている。朝鮮総聯中央本部(東京・千代田区)で6月29日、緊急記者会見が開かれ、日本、韓国、在米韓国人団体にも抗議の動き。その経緯をまとめた。

【発端】高校生からお土産を全没収、「任意放棄書」記入を強制

神戸の朝鮮高校生たちが6月14日から28日の日程で、祖国である朝鮮に修学旅行に行ってきた。

引率した関係者によると「平和と繁栄の流れの中、行く修学旅行はまた格別な思い」があり「なによりも楽しくなによりも感動的な15日間」だったのが、「最後は最悪な修学旅行に」なってしまったという。到着した関西国際空港の税関で、生徒たちが朝鮮から持ってきた土産を全て没収されてしまったのだ。

「お土産、没収の嵐。 泣きわめく女子生徒、悔しくて悔しくて怒りの抗議をする男子生徒。地獄絵図でした。税関の対応は『上の指示で輸入が禁止されているから』のみ。若干18歳の高校生に『任意放棄書』なるものを『強制的に』書かかせる当局の方々には人の心がないのでしょうか。あまりの悔しさに、せめてクッションなどのお土産の紙だけでもと一枚一枚、回収する男子生徒。ゲートを出た瞬間に泣き崩れていました。」

日朝関係の凍結・硬直した現況を打開する為にも、双方の架け橋となり得る在日朝鮮人の存在は非常に注目されるべきだし、また、重要視されて然りだ。

コリョ・ジャーナルより)

翌日、総聯中央による緊急記者会見

総連中央本部での緊急記者会見
総連中央本部での緊急記者会見(日刊イオより)

総聯・国際統一局の徐忠彦局長は、「神戸朝鮮学校・高3生徒(62人)らが、修学旅行の際に親戚や友人からもらったお土産を税関当局の非条理な没収が、保護者らの声で明らかになり、事実関係を調べた結果、あまりにも酷い」と、緊急記者会見の経緯を述べ、「神戸朝高の生徒たちは、朝鮮にいる親戚や友人からもらった心からの贈り物を目の前で没収され、その非情さに心を引き裂かれて泣きじゃくったという。南北と朝米間の和解の流れの中で、生徒たちは『次は朝鮮と日本の関係改善の番だ』という期待と希望に胸を膨らませて帰ってきた。そんな思いが、ささやかな贈り物やお土産まで没収され、日本に着いた入り口で無残にも踏みにじられた」と話し、謝罪を含む3点を日本政府に求めた。

日本政府への3要求

  1. 朝鮮生徒への人権侵害行為を謝罪、再発防止。
  2. 日本政府の対朝鮮制裁の撤回
  3. 朝鮮学校への差別・弾圧中止、国際人権法に基づいた諸権利保障

未成年にお土産没収は深夜0時半にまで、保護者の怒り頂点

62人の生徒たちは2台の飛行機に分乗。許校長は1便目の生徒らを引率。税関で全員のスーツケースや鞄が開けられ、生徒6人のお土産・民芸品などが押収されたという。

2便目は20時半に関空へ到着する予定だったが運航が遅れ、23時過ぎに到着。しかし、ここでも税関は全員のスーツケースを検査し、お土産や民芸品を大量に押収。生徒たちは声を上げたり涙を流して説明や抗議するも、税関は放棄書へのサインを要求した。税関から最後の生徒が出てきたのが0時半。飛行機が遅れただけでも心配なのに、お土産まで没収され泣きじゃくる我が子を見て、迎えに来ていた保護者は怒りを禁じえなかったという。

朝鮮総連本部での質疑応答

主に国内メディアが事実関係の確認をする中、ロシアの記者と徐局長の質疑応答の内容を紹介。

Q. 在日朝鮮人は日頃どのような差別を受けているか?

A. 朝鮮学校のみが高校無償化制度から排除される差別のほか、文科省からの通達で、朝鮮学校にだけ補助金を出さない自治体が増えた。ヘイトスピーチはもちろん、在日商工人に対する融資を銀行が渋ったり、朝鮮籍と韓国籍に制度の差をつけるなど、生活上さまざまな問題がある。また、マスコミの意図的な「北朝鮮敵視報道」で、子どもたちを狙い撃ちにした脅迫もある。

Q. この事件、日朝関係への影響は?

A. この事態はすでに本国にも伝わっており、今後の日朝関係に大きな禍根を残すだろう。南北間、朝米間で和解が進み安倍総理も対話重視の姿勢を見せているが、口先だけではなく、今回のような卑劣で非人間的な措置をやめるべき。

Q. 子どもが標的になっている現状どう考えるか?

A. 制裁の効き目がないので、日本の在日朝鮮人を人質のように考え、圧力をかければ態度を変えるだろうとの思惑で、卑劣極まりない。在日朝鮮人は、植民地支配の被害者。その子孫を苦しめる行為は、国際的にも犯罪行為に当たるだろう。例えると、ドイツ政府がユダヤ人をいまだに差別している状況が、今の日本で起こっているようなもの。私は国連人権理事会にも参加するが、その例を出すと誰も信じない。そんな酷いことが日本で起こっているのか?という反応だ。

神戸朝高・許校長

「子どもたちは偏見の中にいる」 朝鮮学校の情報発信を訴え

「このようなことを知らない人がたくさんいる。朝鮮学校は反日教育ではない。例えば『拉致問題』でも朝鮮と日本、両面の見方を考えさせ、どのように理解、解決すればいいか授業にしている。子どもたちが日朝友好の架け橋になれるような教育を心がけている。」

「子どもたちは偏見の中にいる。高校無償化の問題では各地で裁判を起こし、神戸では月に1度、街頭で署名活動をしている。『頑張りや』という激励もあるが、活動のことをほとんどの人は知らないだろう。朝鮮学校の子どもたちがどんな思いをしているのか、情報発信してほしい」

出典:日刊イオ

緊急記者会見コメント全文

昨晩(6/28)、NH980便とCA161便に分乗して関西国際空港に降り立った神戸朝鮮高校生徒62名が朝鮮への修学旅行の際、親族や知人からもらったお土産などの物品を税関当局がむやみに没収するという暴挙を働いたことが、明らかになった。
生徒たちの保護者たちから朝鮮総聯中央本部に連絡が入り、関西国際空港の税関当局が子供たちのお土産まで取り上げるという卑劣な蛮行を働いたこと、この蛮行が日本政府の指示によるものであるのは明らかなので、本国にしっかりと伝え、日本政府に正式に抗議してほしいとの要請が多く寄せられた。

事実関係を調べたところ、あまりにもひどいので、記者会見する必要性を感じていたところ、たまたま神戸朝鮮高級学校の校長が東京に出張で来られているということだったので、事実関係も明らかにしていただくべく、急きょ本日この時間に記者会見することになった。

具体的な事実関係については、校長から説明していただく。
神戸朝鮮高校の生徒たちは祖国の親族や友人からもらった心からの贈り物を目の前で無残にも没収され、その非道さに心を切り裂かれ、泣きじゃくり、大声で抗議したという。

朝鮮半島で北と南が、そして、ついに朝鮮とアメリカが握手を交わし、和解の流れができた中で、次は朝鮮と日本とが握手を交わし友好的な関係になる番だと期待と希望に胸を膨らませ、朝鮮からの真心のこもったお土産を日本にいる家族や学校の友達、後輩たちに渡そうと、大事に持ち帰ったにもかかわらず、その入り口で無残にもその期待と希望を切り刻まれたのである。
朝鮮と日本との和解と友好を心から願って日本に戻ってきた生徒たちの心を、なぜこのように残酷に踏みにじり、両国と両国の人々との関係をこれほどまでに悪化させようとするのか、私たちは到底理解できず、絶対に許すことができない。
私は、すべての在日朝鮮同胞の名において、不当な「制裁」のもと、日本政府の指示に沿って関西国際空港の税関当局が行った、卑劣で非人道的な蛮行について、強い憤りをもって断固糾弾し抗議する。

先の北南首脳会談、そして史上初の朝米会談を契機に、朝鮮半島情勢が平和と和解に向かい、全世界の人々がこのような流れを積極的に歓迎し支持している中で、唯一日本政府だけが、これに逆行する敵対行為に固執し、制裁を口実に過去の植民地支配の犠牲者である在日朝鮮人、とくに子供たちの基本的人権までも踏みにじり、差別し、心に傷を負わしていることは、朝日両国民はもちろん、世界の人々の非難を免れないだろう。

安倍総理は、最近「朝日平壌宣言に基づく国交正常化」、「日朝首脳会談の開催」、「日朝間の信頼醸成」を云々しながら、対話を重視する姿勢を鮮明にしているが、その裏で、実際には、安倍総理が指示した不当な「制裁」のもとで、このような非人間的な敵対行為が公然と行われているのである。

対話と圧力、和解と敵対行為が両立しないということは、現在の北南関係と朝米関係の動きを見ても明らかであり、安倍政権がいくら「対話」や「信頼醸成」を口にしても、それは偽善的詭弁としか映らない。
今回の事件は、すでに本国にも伝わっており、今後の朝日関係に大きな禍根を残すであろう。
日本政府が、真摯に朝鮮との対話を望むなら、口先だけではなく、このような卑劣で非人道的な措置を止めることから始めるべきである。

私は、朝鮮学校に通う生徒とその保護者をはじめとするすべての在日朝鮮人の名において、ピョンヒャン宣言に基づく、朝・日両国間の関係正常化と在日朝鮮人の人権の公正な保障を切に願い、次のように要求する。

  1. 制裁を口実に、基本的人権を踏みにじることは許されず、よって税関当局は、在日朝鮮人生徒に対するこのような職権濫用、非道極まりない人権侵害行為について真摯に謝罪し再発防止を確約すること。
  2. 日本政府は今回の事態が発生した根源である朝鮮に対する不当な「制裁」を一日も早く撤回すること。
  3. 日本政府は、在日朝鮮人の民族教育に対する不当な差別と抑圧を直ちに中止し、国際人権法に基づいた諸権利を保障すること。

在日コリアンの声

ネットの声

韓国メディアの反応

韓国の団体、在米韓国同胞が抗議の動き

2018年7月2日、この騒動の日本政府に対する非人道的行為を糾弾し、多くの団体が再発防止を求める緊急記者会見の動き。

【在米同胞全国連合会】声明文:反北、反総連敵対行為清算なしで日本に未来はない(2018年7月2日)

韓国で224の市民団体が会見、日本大使館は抗議文受け取り拒否(2018年7月3日)

日本大使館前で開かれた抗議の会見
日本大使館前で開かれた抗議の会見(Oh My Newsより)

モンダンヨンピルなど連名で抗議文

韓国で224の民間団体が神戸朝高生の土産没収に抗議する6月29日の朝鮮総連記者会見に連帯の意思を表明し、チョウ・ホンジョン牧師及び「モンダンヨンピル(朝鮮学校支援団体)」のキム・ミョンジュン事務総長など20余名が諸団体を代表し7月3日11時より日本大使館前で記者会見を開いた。ドイツアメリカオーストラリア等、83の海外団体、個人も賛同。

会見内容抜粋

日本政府が在日同胞学生達の人権を蹂躙し、職権を乱用した上で貴重な思い出の詰まった土産品を押収した事に対し誠実な謝罪を行い、押収した土産品を全品返還すると共に人権蹂躙行為が再発しないよう措置を講じる事を約束する事を促すと同時に、朝鮮に対する独自制裁の撤廃と在日同胞の民族教育に対する不当な差別と弾圧を即時中止し国際人権法に基づいた権利を保障を求めた。

日本大使館員「担当窓口が無いため抗議文は受け取れない」

彼らが抗議の書簡を日本大使館員に手渡そうとした所、 「担当の窓口が無いために抗議文は受け取れない。 郵便で郵送してもらわないと受け取れない」と応じた。

新聞に掲載された朝鮮お土産没収

投書欄

北海道新聞・投書欄「北朝鮮土産没収にあぜん」
北海道新聞・投書欄より(2018年7月5日)

朝鮮「労働新聞」

朝鮮労働党機関紙「労働新聞」論評
「労働新聞」掲載の論評(2018年7月5日)

止まらない、税関でのお土産没収

税関の嫌がらせのようなお土産没収は、一般人だけでなく、朝鮮人、日本人、韓国人、国籍を問わず、アントニオ猪木や有田議員など、著名人や政治家などにも広がっており、多くの体験者がその陰湿性を指摘している。

2019年の最新事例

祖国から戻りましたが、お土産を没収されました。
今回は親戚からいただいたお土産などがたくさんあり、没収の恐れなどあまり気にせず思い出になるものをたくさん持ち帰りました。
すると税関では荷物の中からお土産らしき物だけを横に取り出されて、何と「10個までは持っていっても良い」と。

税関の荷物検査の様子
税関の荷物検査の様子(旅行者のツイッターより)

そんなルール初めて聞きました。これは経済産業省からの指示だとか。
買ったものでは無い、などといろいろ抵抗を試みましたが結局、千円以下のものを7つ取られました。
他に次男から頼まれていた「切手集(切手セット)」だけは指定して没収されました。

朝鮮の「切手集」を没収
旅行者の次男から頼まれていた「切手集」のお土産は、なぜか指定して没収されたという。

最近、没収されることは無いと聞いていたのですが、情勢なども関係してるのでしょうか。 蚊帳の外の政府ができるのはこれくらいの嫌がらせしかないのでしょう。惨めなものです。 帰りに任意放棄書を書くように言われましたが、書きませんでした。

とても悔しかったのですが時間が遅くそれ以上の抵抗は諦めて帰りました。 (相手の名前はしっかりメモしました。渡辺重雄 統括監視官) 夏休みの間じっくりと闘ってみます。

これが没収されたものです。フェスパック2つ ワラビ乾き物2つ 缶ビール2つ 切手シート1つ。

税関で没収された朝鮮のお土産
税関で没収された朝鮮のお土産

一体どれほどの方が没収されているのだろう。 諦めてる人も結構いるのでは。忙しい時ならスルーしていたかもしれない。 私もたまたま運が悪かったのかもしれないが、税関もよりによってこんなやつを相手にしてしまい運が悪かったのだろう。 闘わなければ。 他でもない人権の問題なのだ。

ツイッターの反応

切手集没収の件は後にロイターで報道される

没収されたケース

日本人ユーチューバーが北朝鮮旅行のお土産を税関で没収される(動画31分20秒あたり

没収された朝鮮のお土産
没収の直前写真(没収された朝鮮のお土産)=動画31分20秒から

没収されなかったケース

その他の事例

通達「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置について」を知る

2017年4月7日に「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置について」が閣議決定され経済産業省の通達により朝鮮への輸出入禁止措置が継続した。(H29/04/14~H31/04/13)

措置の内容

  1. 朝鮮への全貨物の輸出禁止。(例外:人道目的に該当する国際郵便)
  2. 朝鮮を原産地または船積み地域とする全貨物の輸入禁止。例外:衣服やシャンプー残液など、日本から持ちだした生活用品の余り物)

=簡単にいうと、持ちだしも、持ち込みも禁止

ルールと一般常識のギャップ、その理由

Q:関空以外でお土産がOKな理由

人道的に見てお土産OKでは?との考えは誤り。人道上許可されるのは国際郵便で送る場合(輸出)のみ(今回のような旅行時に無関係)。輸入では人道上の例外措置はなし。しかし、お土産がパス出来ていた理由は、「対北朝鮮経済制裁」の目的は核及びミサイル開発の阻止であり、高校生のお土産を没収することがその目的達成に寄与するとは考えられない、との現場の判断であると推測されます。

Q:もらったものはOK?

購入品は朝鮮にお金が落ちるから阻止、もらいものはそうではないからOK、と税関の解釈と考えられます。法的根拠はない。

Q:10個までならOK?、3種類までならOK?

問い合わせ時によって違うが、上記と同様、その税関の解釈。法的根拠はない。

Q:朝鮮から国際郵便で貨物の輸入は?

朝鮮での購入品を国際郵便で個人宅に送ると届く。これも法的に認められているわけではなく、税関の解釈

Q:任意放棄書に問題は?

民法上は物権や債権の放棄には親権者の同意が必要です。未成年者に親権者の同意なくこの様な書面を書かせたことは明らかに違法。弁護士など専門家にご相談を。

法律ありながら、判断は現場任せ

ここまで読んでわかるのは、法律がありながら実際の判断は現場任せ、これが法律の特徴です。この為、電話で問い合わせも税関の判断によって返答がまちまち。つまり…

羽田と関空の税関判断の差とは?

  • 羽田の判断:高校生のお土産没収 = 経済制裁法令目的に寄与しないと判断
  • 関空その他:高校生のお土産没収 = 経済制裁法令目的に有効と判断

理不尽な没収を受けた場合

事前に、本件に詳しい方に相談しましょう。
見誤ってはいけないのは、税関係員たちは法に則った行動である点、違法と見なさないこと。

全国主要空港税関相談室ご案内

空港税関の中から本件担当部署が第何監視部門なのか必ず控えてください。その責任者である統括という役職が話し合いの対象となります。(毎回違う人が出ては話し合いになりません)

どこの空港にも税関相談室がある

  • 札幌空港=函館税関
  • 仙台空港=横浜税関
  • 羽田、成田、新潟(海空共に)=東京税関
  • 名古屋空港=名古屋税関
  • 関空=大阪税関
  • 広島空港=神戸税関
  • 北九州、福岡空港=門司税関
  • 沖縄空港=沖縄地方税関

9月になってお土産返還されたとNHK報道

2回目の首脳会談直前のニュースでした。「北朝鮮の反応に注目」という見出しで、まるでお土産返還が外交であるかような論調。相手は子供です。

週刊金曜日より

「週刊金曜日」2019年10月4日号掲載の記事を紹介する。

「無条件」首脳会談を求めながら 朝鮮渡航者への「制裁強化」

安倍晋三首相は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対し、拉致問題の進展を前提としない首脳会談を呼び掛けている。ところが一方では今年になり、独自制裁の強化ともいえる措置を次々と実施している。

日本政府は朝鮮への独自制裁の一つとして「外国為替及び外国貿易法(外為法)」によって、一切の輸出入を禁じている。

福岡県警は7月11日、19歳の少年が朝鮮で製造されたビールを経済産業大臣の承認を得ずに輸入したとして外為法違反の容疑で書類送検した。少年は「大同江(テドンガン)ビール」1本を200~300円で中国・上海において購入し、日本へ持ち込んだ
という。このようなことでさえ“犯罪”として摘発するのは異常である。

また政府は、朝鮮から日本へ戻った人に対する空港の税関での徹底した荷物検査を続けている。財務省の機関である税関が、経産省からの依頼を受けて実施。朝鮮そのものへの考えられるすべての制裁措置を実施してしまい、朝鮮への渡航者という個人への嫌がらせとして行なわれている。

対象となる「輸出入」は、数百万円から数億円のような規模のものと誰もが思うだろう。ところが税関は、極めて安価なものでさえ没収してきた。

2018年6月、関西空港の大阪税関は「神戸朝鮮高級学校」の生徒62人全員の荷物検査を実施し、18人から民芸品や化粧品など多数を没収した(「週刊金曜日」18年7月13日号」参照)。

私は帰国時の税関で、トランクを開けての検査を毎回のようにされている。それは形式的なものではなく、明らかに汚れ物が入っていると分かるビニール袋まで念入りに調べるほど厳しいものだ。関空での没収事件でも、女子生徒の下着を一着ずつ確認したという。このように税関の朝鮮渡航者への対応は、日本と敵対する国から戻った人を完全に犯罪者扱いしている。

●11個以上なら税関で土産品没収
この税関での没収が、さらに強化されていることが分かった。8月10日、朝鮮から羽田空港へ戻った「千葉朝鮮初中級学校」校長の金有燮(キム・ユソプ)さんが、朝鮮で暮らす親戚からの土産品を東京税関に没収された。缶ビール2本・乾燥ワラビ2袋・フェイスパック2箱と切手セット1冊品の合計7点。金さんは、千葉県内の市民らで構成された「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク」のメンバーらと8人で訪朝していた。

支払許可証
伊藤へ送られてきた財務省の「支払許可証」(撮影/伊藤孝司)

税関は没収の判断に迷う場合、経産省へ問い合わせをしている。金さんの場合はそのために15分ほど待たされ、「親戚からの土産品の持ち込みは10個が上限」との経産省の見解を告げられた。

「在日本朝鮮人人権協会」によると「持ち込み10個まで」という基準は、関空での没収事件後に設けられたという。この時、抗議の声が高まったため、9月になって没収品は返却された。経産省はそれに懲りたのか、何の根拠もない「10個」という基準を設けたのだろう。

金さんが8月13日に経産省へ直接問い合わせたところ「親戚からもらったものは、例外として10個までの持ち込みが認められることがある」との説明だった。つまり、10個以下ならばいつでも持ち込めるということではないのだ。それまでは税関職員によってはまったく没収をしなかったケースもあったのを、10個以上は没収するという基準を設けたのである。

「県民ネットワーク」は8月19日、安倍首相あての「土産品没収に対する抗議と要請」を発表。「羽田空港における所持品検査と土産品の没収は、草の根レベルの友好親善を踏みにじり、日朝関係の緊張緩和と東アジアの平和構築の動きにも逆行」と批判。そして土産品の返還と謝罪だけでなく、没収の根拠となっている朝鮮に対する独自制裁の解除を求めている。

●財務省が始めた新しい嫌がらせ
日本の朝鮮への独自制裁のうち「モノ」の移動を取り締まるのが経産省で、「カネ」については財務省が担当。10年から、朝鮮へ10万円以上の現金・小切手などを持ち出すには「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」 の税関への提出が義務付けられている。

今年2月くらいから財務省は、驚くべき措置を始めた。日本人の朝鮮への渡航者は、中国・ロシアなどにある朝鮮の大使館・領事館でビザ(査証)を取得する必要がある。現在の中国でのビザ発給費用は270元(約4300円)。

財務省はこの支払いについて、外為法に基づく許可申請が必要だと言い出したのだ。「許可無く査証代金を支払ったことが判明した場合には、その者からの次回申請については、 一切の許可を与えないことを想定している」としている。

朝鮮への渡航予定者は「許可申請書」を3部作成し、日本銀行へ送付。すると担当者から本人確認のための電話がかかり、財務省から「財務大臣 麻生太郎」の名前で許可証が送られてくる。そして帰国後は、ビザ代金の領収書コピーを「支払い報告書」とともに財務省へ提出するのである。

ところが、それだけでは終わらなかった。私は9月20日に、この措置の開始から3回目の「許可申請書」を送付。すると今回初めて、財務省の担当部署である国際局調査課外国為替室から27日に電話があった。

今回は出発までに日数が少ないため必要ないが、次回からはビザ代金だけでなく朝鮮現地での取材経費についても申請するようにというのだ。滞在に必要なホテル代や飲食代は対象にならないが、車両チャーター代やガイドへの支払いも事前の支払い許可が必要だとした。

そうなれば取材だけでなく、友好訪問団や人道支援・交流事業で訪朝する日本人も対象になるだろう。またビザ取得が必要ない在日朝鮮人の、祖国訪問・親族訪問での現地の支払いの一部が滞在費ではないとされれば対象者はいきなり拡大する可能性もある。

朝鮮への独自制裁は、輸入は06年、輸出は09年から全面禁止にするなどかなり前から実施されている。ところが今年になってから、渡航者個人へ新たにこの措置を始めたのだ。日本人渡航者へ実に手間のかかる手続きを強要するこの措置は、朝鮮への新たな制裁として無理やり考え出したものだろう。

そして安倍政権は、10月1日からの幼稚園・保育園・認定子ども園の無償化から、朝鮮学校の付属幼稚班などを対象から外そうとしている。宋日昊(ソンイルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は9月18日、金丸信元自民党副総裁の次男の金丸信吾氏と懇談。

大使は、朝鮮高校だけでなく幼稚班も無償化から除外する措置を強く非難。これらが撤回されなければ、関係改善は困難とした。日本政府が独自制裁を解除するどころか強化してきたことが、日朝交渉の最大の障害になっている。

にもかかわらず安倍政権は、今年になってからも、こうした在日朝鮮人への差別政策や朝鮮渡航者への嫌がらせといった制裁強化を次々と始めた。安倍首相が日朝首脳会談に、本気でないことは明らかだ。

(引用元:「週刊金曜日」2019年10月4日号)