いまだに「北朝鮮」と呼ぶ日本のメディア、呼称変更史と時代背景

朝鮮民主主義人民共和国

朝鮮民主主義人民共和国は、日本が「北朝鮮」と呼ぶことに対して幾度かに渡り直接指摘、批判をしている(1971年プレ五輪、2003年国連総会)。2003年には「労働新聞」は、朝日新聞を指して「北朝鮮」呼称を批判する論評を掲載。「本人」から「その名で呼ぶな」と言われても改めないのは、国家に対する冒涜としか言えない

朝鮮民主主義人民共和国と呼ばれる日

2018年6月の朝米会談以降、制裁をやめ安倍政権が朝鮮との直接対話を模索し始めたなら、まずは朝鮮民主主義人民共和国と声を出して見てはどうだろうか。その日が来ると期待し、今日までのDPRK呼称変更の歴史を振り返りました。

「我が国の称号を正しく」。総連中央は、日本各関係部門に対し、共和国の正式称号を使用することを要請している(1959.5.13)

朝鮮、DPRKは日本でどのように呼ばれてきたのか

「北朝鮮」呼称にまつわる歴史、時代背景

年代 呼称 背景
1945.8.15〜
1948.2.13
北朝鮮」、「朝鮮北部」、「北鮮」(当時の「朝日新聞」) 朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)創建以前なので、「北朝鮮」や「朝鮮北部」は言葉通りの意味を成す(尚、「北鮮」は植民地期から使用され、朝鮮蔑視を込めた呼称として使われており、朝鮮半島南部は「南鮮」、「朝鮮南部」と表記されていた)
1948.2.13〜
1959.7.11
北鮮
1968年〜 北朝鮮 この頃から使用
1971.2.4 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という、正式名称と「北朝鮮」の歪な並列表記へ これは、1972年札幌冬季五輪の前年開催の1971年プレ五輪で、DPRK側が「北朝鮮」ではなく正式名称使用を五輪組織委に申し入れ、表記改められた。

日本新聞協会ではこれを受け、各紙記事初出は「朝鮮民主主義人民共和」「北朝鮮」を併記。

テレビ局では「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」と呼ばれるように。

但し、2度目の呼称は「北朝鮮」のまま

1996 産経新聞「北朝鮮」に
1999 読売新聞「北朝鮮」に
2002.12.28 朝日新聞「北朝鮮」使用で社告 呼称定着と、記事簡略化を理由に「北朝鮮」使用を告知(全文後述)
毎日日経もこの時期から「北朝鮮」に
2003.1.1 NHKが深夜0時30分のニュースから「北朝鮮」。他局も同時期に追随。 以降、現在まで全メディア「北朝鮮」
2003.1.29 国連総会で「北朝鮮」と呼ぶ日本を批判 日本代表団が「北朝鮮」と呼んだことに「侮辱的な表現」と批判。

「朝日新聞」の「北朝鮮」使用の社告全文

おことわり 朝鮮民主主義人民共和国の国名表記について 社告

『朝鮮民主主義人民共和国』の国名については、中国、韓国のように関係者が納得する適切な略称がないなどの理由から、『朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)』と表記してきました。しかし、北朝鮮という呼び方が定着したうえ、記事簡略化も図れることから、今後、外交記事などでは引き続き従来どおりの表記を使う場合もありますが、その他の記事では『北朝鮮』という呼称を使います。(「朝日新聞」2002.12.28朝刊3面より)

朝日新聞の社告

メディア側の論理と、時代考察

「北鮮」の呼称使用の時期を除き、メディアは長い間「朝鮮民主主義人民共和国」という正式名称を使用していたが、なぜ「北朝鮮」に変更したのか。メディア側の理由は下記の通り。

メディア共通の理由

  1. 「北朝鮮」が定着したこと
  2. 記事の簡略化が図れる

上記に加え、メディア独自の理由

  • 読売独自の理由:他国も「北朝鮮」と表記していること
  • NHK独自の理由:2002.12成立の「北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律」でも、「北朝鮮」という呼称しか使用していないこと

国際儀礼より文字数を優先?

「北朝鮮」が定着していたとして、或いは、「北朝鮮」で8文字削減で、放送時間が2秒程節約できたとして、一国の正式名称を変更してもよい理由にはならないことは、言うまでもない。

また、「他の国も「北朝鮮」としている」という理由は、英語圏では「North Korea(北朝鮮)」という表記を用いるがこれは、「South Korea(南朝鮮)」と対になっている言葉であり、北を「北朝鮮」と呼び、南を「韓国」と呼ぶ日本とは状況が異なる。

FIFAや五輪では「DPRK」と正式名称

つまり、「他の国」が常に「North Korea」を用いているわけではない。また、中華人民共和国では朝鮮民主主義人民共和国の略称として「朝鲜(朝鮮)」、大韓民国を「韩国(韓国)」を使用している。そもそも中華人民共和国では「北朝鮮」という国名を使っていない

なぜメディア同時期に表記変更したのか

この時期は、朝日首脳会談で金正日国防委員長が日本人拉致を認め謝罪し、朝日平壌宣言を採択した時期である。これ以降のニュースは、朝日新聞なら3倍以上に増加し、ほとんどがネガティブな論調であった。「北朝鮮」という呼称は、このような流れの中で一斉に使用され、逆に朝鮮民主主義人民共和国という正式名称は、日本から姿を消す。
状況を鑑みると、定着だの記事の簡略化だのではなく、日本政府もメディアも朝鮮民主主義人民共和国を国として認めず、「北朝鮮」とは強硬姿勢で相対していくという意思が平壌宣言の裏で一方的に「確定」されたのだろう。

「反北朝鮮社会」を増幅させる言葉

一時期は朝鮮民主主義人民共和国という正式名称も並列で表記されていたが、現在は全メディアで「北朝鮮」使用は、2002年の「拉致問題」が決定的な契機だった。この時期から、朝鮮に対し否定的な報道が急増し、いわゆる「反北朝鮮」社会が急速に形成される。

北朝鮮ミサイル発射

 

参考資料

  • 森類臣『日本のマスメディアにおける「北朝鮮」報道の一考察―「北朝鮮」単独呼称への切り替えと背景の分析を中心に―』(『翰林日本学』15号、2009年、p.119-141))
  • 留学同情勢ニュースブログ:「北朝鮮」という呼称について
(⚠️現在、まとめ中につき、本文に誤字や不十分な表現があります)

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